
現在、日本では要支援・要介護者の数は年々増加しており、2022年では690万人いるとされている。男女ともに75歳以上では要支援・要介護者の割合が10%を越えており、超高齢社会を迎えた日本にとって介護は個人レベルでも社会レベルでも深刻な問題となっている。いつまでも元気で、社会とつながりを持ち、自立した日々を送るためには要支援・要介護に至る前に未然に防ぐことが重要である。
健康な状態と要介護状態の中間の状態を「フレイル」といい、心と体の働きが弱くなってきた状態である。フレイルは大きく3つに分類され、それが身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルである。我々は、健康状態とフレイルとの可逆性〔健康⇄フレイル〕に着目し、フレイルの予防・改善を行うことで健康社会の実現を目指す。
3つのフレイルは互いに密接に関連しており、フレイルのどれか1つの入口からドミノ倒しのように急速に要介護状態へと進展する。そこでコア研究は3つの研究領域(身体領域/精神領域/社会領域)を立ち上げ、これらが連携・融合した研究を実施する。本研究では各研究領域に対し、基礎研究を基盤とした科学的なエビデンスを付与して領域間の連携・融合をより強固なものにする。さらに、介護の原因となった主な原因の上位を占める運動器疾患や認知症および糖尿病に焦点をあて、我々が保有するフラボノイドの化学合成法とフラボノイドの新規薬理活性をもとに、これらを用いた新たなフレイルの予防法・改善法を確立する。
本研究の成果は、フレイルの予防・改善効果を有する化合物を創出することで健康増進に寄与できる。実際に研究成果の一部を活用し、青森県野辺地町と連携してフラボノイドを含有する天然物を健康増進に役立てる試みも進行している。このように、フラボノイドを健康食品もしくは医薬品として社会実装することで健康社会の実現に寄与できる。
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