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コア研究

サルコペニアの病態解明とその予防・改善の戦略構築

  • 身体領域

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サルコペニアとは、加齢に伴い筋肉量が減少し、筋力も低下した状態を示します。サルコペニアの有病率は80歳以上では男性の約3割、女性の約半数と高く、サルコペニアにより死亡、要介護化のリスクはいずれも約2倍高まるといわれています(Kitamura et al., 2020)。サルコペニアの病態には、未解明な点が多く、詳細な病態解明と効果的な予防戦略の開発が求められます。本研究では、サルコペニアの病態解明と予防戦略の構築を通して、健康寿命の延伸に寄与することを目指します。

サルコペニアの病態解明

サルコペニアに陥った骨格筋は、筋繊維の萎縮のみならず、筋線維を取り囲む細胞外マトリクスにも異常が生じることがわかっています。実際に、老化した骨格筋内は、筋内コラーゲンが異常蓄積し、筋機能が低下します。さらに、コラーゲンには、終末糖化産物が蓄積しやすい性質があります。終末糖化産物が蓄積したコラーゲンは分解されにくいため、組織内にコラーゲンが異常に蓄積してしまう可能性があります。本研究では、筋線維を取り囲む細胞外マトリクスに着目して、老化に伴い筋内コラーゲンが異常蓄積する分子機序や筋機能低下のメカニズムを明らかにする予定です。さらにサルコペニアに様々な障害や疾患が合併した病態の解明も計画しています。例えば、サルコペニアを呈した骨格筋に損傷や萎縮などの筋障害が合併した状態、サルコペニアに肥満が合併したサルコペニア肥満、サルコペニアと慢性疾患(糖尿病や慢性腎臓病)の合併等があげられます。これらの病態を形態学的かつ分子生物学的に解明し、サルコペニアの予防・改善を検討するうえで基盤を構築します。

予防・改善戦略の検討

本研究では、実験動物を用いた基礎研究を基軸にサルコペニアに対する運動療法と栄養療法の効果を検証し、サルコペニアの予防・改善戦略を検討します。運動療法の様式、負荷量、頻度に加えて、1日の活動量が骨格筋やその他臓器に与える影響を解析する計画です。さらに、栄養療法については、本学が独自に合成した化合物の効果を検証する予定です。また、共同研究先が主導となり、サルコペニアと糖尿病や慢性腎臓病が合併した病態に対するSGLT2阻害薬と運動療法の併用効果や、神経筋電気刺激(Neuromuscular electrical stimulation;NMES)を活用した地域在住高齢者に対する運動指導が、骨格筋や運動機能に与える効果を検証する計画です。

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Research Team

金澤 佑治

金澤 佑治

医療保健学部・理学療法学科・准教授

松尾 由理

松尾 由理

薬学部・薬学科・教授

高橋 達雄

高橋 達雄

薬学部・薬学科・教授

鈴木 宏一

鈴木 宏一

薬学部・薬学科・教授

佐藤 妃映

佐藤 妃映

医療保健学部・医療技術学科・教授

宮地 諒

宮地 諒

医療保健学部・理学療法学科・講師

宮原 謙一郎

宮原 謙一郎

医療保健学部・理学療法学科・講師

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