近年、COVID-19のパンデミックにより、人類に多大なる影響を及ぼす感染症がいつどこで起こるかもしれないことを実感させられました。感染症の流行は社会全般においても個人においてもウェルビーイングを低下させる要因となります。しかし、私たちは感染症との闘いを避けて生きることはできません。COVID-19の次にどのような感染症が脅威になるかもわからないため、さまざまな感染症に対する備えが必要です。また、COVID-19では、人類に未曾有の感染症が発生してから対応を始めるのでは手遅れになることも証明されました。これらの経験によって、幅広くウイルス感染症に対する理解と抗ウイルス効果のある物資を探索・調査しておかなければならないと考えています。
しかし、抗菌薬とは異なり、抗ウイルス薬には広いスペクトルを有するものはほとんど存在しません。そこで、本研究では、DNAウイルス、RNAウイルス等の人類に疾病を引き起こす可能性のあるウイルスを広く取り扱い、天然物由来で抗ウイルス効果を有する物質をスクリーニングし、発見した抗ウイルス効果を有する物質と標的ウイルスタンパク質とのコンピュータシミュレーションによってより活性が高くなるような化合物をデザインします。有機化学合成後、さまざまなウイルスに対する抗ウイルス活性を検討し、新規抗ウイルス薬のベースとなる化学構造や物質を探索して新薬の開発の基礎知識の集積に努めるのが本研究の目的です。コンピュータシミュレーションによって効果が期待される物質については、有機化学合成し、抗ウイルス効果と細胞毒性等の生物学的活性を調べていく予定です。近年流行が報告されてきているデングウイルス感染症やその他のウイルスに対する効果も検討していきたいと考えています。
私が考えるウェルビーイングな社会
感染症の脅威から生命を守るだけではなく、精神的にも安心して暮らせる社会。