ヒトは、眼の前に広がる現実空間から感覚器を通してさまざまな情報を得て行動、体験をしています。近年、VR技術が飛躍的に発達したことで、ヒトは現実空間と同等に新たな空間を獲得しようとしています。これは、我々人類がこれまで縛られてきた現実の時間や場所などの制約から解放されることを意味し、働き方も大きく変わる可能性があるということです。
日本は今、地域の疲弊・衰退や人口急減・超高齢化など、さまざまな課題を抱えています。これらの課題の解決には、東京一極集中に歯止めをかけるとともに、安心して子どもを産み育てられる環境づくりとそのための人材育成が不可欠です。しかし現状は、東京圏への大幅な転入超過が続いており、育児や親の介護と仕事の両立ができず、時間や費用捻出の余裕がないために事業所と労働者の約7割が人材育成や自己啓発に課題があるとの報告があります。
その対策案として、組織風土の改善やICTを活用したテレワークの普及等、社会全体での取り組みが求められていますが、その実現の可能性は不透明です。しかし、ヒトを現実空間という制約から開放させることができれば、性別や年齢、障がいの有無に関わらず、すべてのヒトが個人のワークライフバランスに合わせた社会参画が可能になると考えられます。VR技術やデバイスは、すでに観光や製造現場における研修、避難訓練など、多様な分野で社会実装が進められていますが、すべてのヒトがこれらのコンテンツを活用できるほど一般化も普及もしていないのが現状です。私の研究では、その要因として挙げられるヒトの知覚・認知特性を明らかにし、その特性を活かしたVRコンテンツを社会の多様な分野に発信したいと考えています。
私が考えるウェルビーイングな社会
ヒトを現実空間という制約から開放し、性別や年齢、障害などの有無に関わらず、すべてのヒトが個人のワークライフバランスに合わせた社会参画を行っている社会。